戸建(空き家)を賃貸に出す簡単な方法とは?

こんにちは。(一社)全国古家再生推進協議会 理事長 大熊重之です。本日は、戸建(空き家)を賃貸に出す簡単な方法について、より詳しく解説していきます。

皆さんは、「所有している空き家を有効活用したいけれど、どうすればいいのか分からない」「リフォームや手続きが難しそう」というお悩みをお持ちではないでしょうか。実は、空き家を戸建賃貸として運用する ことによって、社会問題である空き家の増加を抑制しながら、安定した家賃収入を得る という選択肢が広がっています。

  • 「戸建賃貸に興味はあるが、どこから手を付ければいいのか分からない」
  • 「大きなリフォーム費用がかかるのでは、と不安」
  • 「そもそも入居者が付くのかどうか心配」

こうした疑問を一挙に解決するために、本記事では、最もシンプルな戸建賃貸の始め方 を詳しく紹介していきます。最後まで読んでいただければ、以下のような知識が身につきます。

  • 空き家を活用して賃貸経営を行う手順
  • 賃貸経営における法的・税務的な注意点
  • 家賃設定や管理方法などで失敗しないためのコツ

ぜひ、最後までお読みいただき、戸建賃貸への第一歩を踏み出してみてください。

戸建賃貸とは?今なぜ注目されているのか

まず、戸建賃貸とは戸建住宅を賃貸物件として運用することを指します。マンションやアパートと異なり、一戸建てをそのまま「貸家」として提供するイメージです。近年、戸建賃貸が注目される背景として、次のような理由があります。

① 賃貸市場のニーズの変化

  • 新型コロナウイルスの影響で在宅勤務の需要が拡大
    在宅勤務が一般的になったことで、職住一体型の生活を求める人が増えました。アパートやマンションでは在宅環境が狭い・騒音が気になるなどの理由から、より広いスペースを確保できる戸建賃貸へのニーズが高まっています。
  • プライバシーと静かな環境を求める傾向
    共用廊下や上下階の騒音に悩むことが少ない、という点で戸建は魅力です。

② ファミリー層の増加

  • 子育て世帯のニーズ
    戸建住宅は部屋数や庭スペースが多い場合が多く、子どもが伸び伸び過ごせるというメリットがあります。
  • ペット可物件が少ないという現状
    マンション・アパートではペット禁止の場合が多く、ペットを飼いたい世帯が戸建賃貸に流れるケースが増えています。

③ 安定した賃貸経営が可能

  • 競合物件が比較的少ない
    アパートやマンションの賃貸物件と比べると、一戸建て賃貸はまだまだ数が限られています。そのため、ユニークな物件として長期入居が見込めるのです。
  • ファミリー層は長期入居率が高い
    子どもの学校区や周辺環境を重視するため、一度入居すると引っ越しをしにくい傾向があります。

④ 空き家問題の解決策のひとつ

  • 全国で800万戸以上の空き家が存在
    空き家は放置しておくと景観の悪化や防犯上の懸念も高まります。また固定資産税の負担も続きます。
  • 空き家を資産化するチャンス
    古くなった建物でも適切にリフォームすれば、家賃収入を生み出す資産として蘇らせることができます。

賃貸前に確認すべきポイント(建物・市場調査・法的手続き)

戸建賃貸をスタートする前に、以下のポイントをしっかりと押さえておきましょう。ここを怠ると、思わぬトラブルやコスト超過につながる恐れがあります。

① 建物の状態をチェック

  • 耐震性・劣化状況
    築古物件の場合、まずは屋根・外壁の傷みや雨漏り、耐震基準を満たしているかをチェックすることが重要です。昭和56年以前に建てられた旧耐震基準の建物は、耐震補強が必要になるケースがあります。
  • 水回りの老朽化
    キッチン・トイレ・お風呂などの設備が古すぎると、入居者が敬遠する原因になります。また、水漏れやカビが発生している場合は修繕費用が大きくなる可能性も。
  • 給排水管や電気系統
    一見問題なく見える物件でも、配管や電気系統が老朽化している場合があるので、専門家による点検を行いましょう。

② 立地と市場調査

  • 周辺相場のリサーチ
    賃貸経営を成功させるには、周辺物件の家賃相場と比較することが欠かせません。駅やスーパー、学校、病院へのアクセスを調べ、客観的に需要があるかを把握しましょう。
  • 人口動態や再開発計画
    地域によっては少子高齢化が進んでおり、将来の需要が減少する恐れがあります。一方で、再開発が進んでいるエリアでは将来性が高いと判断できることもあります。

③ 法的手続きの確認

  • 住宅ローンの契約内容
    住宅ローンが残っている場合、賃貸転用が許可されるかどうかを金融機関に確認しましょう。転用不可のローンで賃貸化をすると、契約違反になるケースもあります。
  • 火災保険や賠償責任保険
    賃貸物件にはオーナーも借主も火災保険に加入しておく必要があります。物件の保険内容を見直し、貸主用の特約 を付けることを検討しましょう。
  • 契約書の作成
    賃貸借契約書や重要事項説明書など、法律的に整備しなければならない書類があります。契約書については宅地建物取引士などの専門家にチェックしてもらうのがおすすめです。

戸建賃貸を成功させる5つのステップ

次に、戸建賃貸を始めるための流れを5つのステップに分けて解説します。このステップを踏むことで、スムーズに戸建賃貸ビジネスをスタートすることができます。

  1. 建物の修繕とリフォーム
    • 上記で触れた建物調査の結果を元に、最低限必要な修繕を行いましょう。
    • 築古物件の場合、水回りや内装のリフォームに加えて、耐震性を担保することが重要です。
  2. 適切な家賃の設定
    • 周辺相場を参考にしつつ、設備やリフォーム内容によって家賃を調整します。
    • 相場より高すぎると空室リスクが上がり、安すぎると収益が下がります。
  3. 入居者募集(不動産会社の活用・SNS活用)
    • 不動産会社と媒介契約を結び、物件情報をポータルサイトに掲載してもらいます。
    • 自分でもSNSやブログなどで募集告知をして、幅広く周知しましょう。
  4. 賃貸契約の締結
    • 契約書の取り交わしと重要事項説明を行います。
    • 敷金や礼金、保証会社の利用などもここで確定させます。
  5. 管理方法の決定(自己管理 or 管理会社委託)
    • 自分で管理すると管理費用は浮きますが、クレーム対応や家賃滞納対応などの手間がかかります。
    • 管理会社に委託すると、手間は減るものの5~10%ほどの管理委託料が必要になります。

リフォームはどこまで必要?コストを抑える方法

空き家を戸建賃貸として活用する際、多くのオーナーが悩むのは「どの程度リフォームをすればいいのか?」という点です。設備を一新すれば魅力的な物件になるのは間違いありませんが、一方でリフォーム費用が大きくなりすぎると投資回収に時間がかかります。以下では、最低限のリフォームポイントコストを抑えるコツ を紹介します。

最低限リフォームすべきポイント

  1. 水回り(キッチン・トイレ・浴室)
    • 入居者が最も気にする部分。古すぎる設備の場合は交換を検討します。
  2. 壁紙の張り替え
    • 見た目の印象が大きく変わります。汚れやタバコのヤニがある場合は積極的に張り替えましょう。
  3. 床の補修
    • フローリングのきしみや傷みが大きい場合、部分的な補修や張り替えが必要です。
  4. エアコンの設置
    • リビングだけでもエアコンが設置されていると、入居者の印象は良くなります。

リフォーム費用を抑える方法

  1. DIYを活用する
    • 壁紙や塗装など、比較的簡単な作業はDIYで行うと費用を抑えられます。
    • ただし、水回りや電気工事などの専門作業は資格を持ったプロに依頼するのが安全です。
  2. 不要な設備投資をしない
    • 高価なシステムキッチンや最新式の浴槽などは必ずしも必要ではありません。
    • 賃貸用として耐久性・清潔感があれば十分という考え方も大切です。
  3. 「空き家再生士Ⓡ」に相談する
    • 空き家再生のプロフェッショナルが、どの程度リフォームすれば効果的かをアドバイスしてくれます。
    • 物件の特徴やターゲット層に応じた改修計画を立てられるため、ムダなコストを削減できます。

戸建賃貸のマーケティング戦略(効果的な入居者募集)

いくら良い物件を用意しても、入居者を獲得しなければ収益は生まれません。近年はインターネットやSNSなど、情報発信のチャネルが増えており、オーナー自身の工夫 が空室期間を大きく左右します。

不動産ポータルサイトを活用

  • 主なポータルサイト
    • SUUMO
    • HOME’S
    • アットホーム
  • 魅力的な写真・間取り図を掲載
    • 写真の質が悪いと、内見の問い合わせ数が激減するため、プロのカメラマンに依頼するのも検討しましょう。

SNSを活用して広報

  • InstagramやTwitter、Facebookなど
    • 若年層はSNSで情報を集めるケースが増えています。物件写真や内装のビフォーアフターを投稿すると良い反応が得られるでしょう。
  • YouTubeで内見動画をアップ
    • 物件内部の雰囲気を伝えやすく、遠方の入居希望者からも問い合わせが見込めます。

地元の不動産会社に協力依頼

  • 地域密着型の不動産会社
    • 地元の顧客リストや独自の人脈を活用してくれます。
  • 地元企業や大学とも連携
    • 会社の社宅扱いや、大学生向け物件として紹介してもらうなど、ターゲットを絞ったアプローチも効果的です。

入居者ターゲットに合わせた写真・動画

  • ファミリー層向け
    • キッチンやリビング、庭の広さを中心にアピールし、学校や公園などの周辺情報も入れると良いでしょう。
  • ペット可物件
    • ペットとの暮らしをイメージしやすいよう、庭や室内スペースの紹介写真を工夫する。
  • 単身者・リモートワーカー向け
    • テレワークスペースとして使える部屋やネット環境を強調する。

家賃設定のポイントと収益最大化のコツ

次に、家賃設定の考え方について解説します。家賃設定は戸建賃貸の成否を分ける重要な要素であり、高すぎても安すぎても問題 となります。

家賃設定のポイント

  1. 周辺の賃貸相場を調査
    • 同じエリアの戸建賃貸物件やマンションの家賃を比較し、妥当性を判断する。
  2. 競合物件との差別化
    • リフォーム内容、築年数、駐車場の有無などにより付加価値を付けることができれば、相場よりやや高めでも入居希望者が現れることがあります。
  3. 敷金・礼金を調整する
    • 敷金や礼金が高すぎると初期費用が大きくなり、敬遠されがち。逆にゼロにして家賃をやや高めにするなどの戦略も検討できます。

収益最大化のコツ

  • 空室期間を短くする
    • 家賃が少し高めでも長期入居が見込めれば安定収益が得られます。逆に空室が続くと家賃収入はゼロなので、多少家賃を下げてでも早期契約を獲得するという考え方も必要。
  • 複数年契約の提案
    • 法的には2年契約が一般的ですが、長期契約を希望する入居者には特典を付けるなどで退去率を下げる工夫ができます。
  • オプション収入を得る
    • 駐車場代やペット飼育料など、オプションで追加収入を得る仕組みを整えると良い場合があります。

税金や法的手続きの流れを理解する

戸建賃貸を始めるにあたり、税金や法的手続きについても押さえておくことが不可欠です。ここを疎かにすると、後から追加の税金請求が来たり、手続き上のトラブル に見舞われる可能性があります。

主な税金の種類

  1. 所得税・住民税(不動産所得)
    • 賃貸収入がある場合、毎年の確定申告で不動産所得として計上します。経費として計上できる項目(修繕費・減価償却費など)をしっかり把握することが大切です。
  2. 固定資産税
    • 毎年1月1日時点の不動産所有者に課税されます。リフォームで評価額が上がると固定資産税が上昇する可能性があります。
  3. 不動産取得税
    • 物件を新たに取得した場合に発生する税金です。既に所有している空き家を貸し出す場合には発生しませんが、新規購入物件の場合は注意が必要です。

青色申告・白色申告の違い

  • 青色申告
    • 一定の要件を満たすと、最大65万円の控除が受けられるなどのメリットがあります。帳簿付けや申告書類の作成が白色申告に比べて複雑ですが、節税効果が大きいのが特徴です。
  • 白色申告
    • 比較的手続きは簡単ですが、青色申告のような特典はありません。ある程度収入が見込める場合は、青色申告に切り替えるのがおすすめです。

保険加入の重要性

  • 火災保険・地震保険
    • 貸家としての利用に対応した特約を付けること。オーナー側の建物保険だけでなく、入居者にも加入義務を設定しておくと安心です。
  • 管理会社が提供する保険
    • 管理会社経由で借主が加入するタイプの保険もあります。内容をしっかり確認し、必要に応じて補償内容を調整しましょう。

戸建賃貸のリスクとその回避策

戸建賃貸にはメリットが多い反面、以下のようなリスクも存在します。事前にリスクを把握し、適切に対策を講じることで、安定した賃貸経営が可能になります。

① 空室リスク

  • 対策
    • 家賃設定を相場に合わせる、定期的なリフォームや設備更新を行う。
    • 不動産会社やSNSを活用した積極的な募集活動を行い、空室期間を短縮する。

② 修繕費用リスク

  • 対策
    • 築古の場合は、入居前にまとめてリフォームすることで入居後のトラブルを最小限に抑える。
    • 毎月の家賃収入の一部を修繕積立として確保しておく。

③ 入居者トラブルリスク

  • 対策
    • 入居審査を厳格に行う、家賃保証会社を利用する。
    • 自己管理が難しい場合は管理会社に業務委託し、トラブル対応を任せる。

④ 地域コミュニティとの摩擦

  • 対策
    • 地域の自治会活動やゴミ出しルールなど、周辺住民に配慮した管理を行う。
    • 入居者にも地域ルールをしっかり周知しておく。

成功事例紹介:戸建賃貸で収益を生み出した事例

ここでは、実際に「築40年の戸建空き家」をリフォームして、毎月10万円の家賃収益を得ている事例を紹介します。

事例概要

  • 物件概要
    • 築40年、木造2階建て、駅から徒歩10分
    • 空き家になってから5年以上放置されていた
  • リフォーム内容
    • 外壁・屋根の補修、耐震補強
    • 水回り(キッチン、トイレ、浴室)の交換
    • 壁紙の一新、フローリングの一部張り替え
  • リフォーム費用
    • 約300万円(DIYで一部コストダウンに成功)
  • 家賃設定
    • 相場9万円の地域だったが、リフォームで内装をきれいにし、駐車場を付けるなど差別化を行い、家賃10万円で募集開始
  • 入居者の属性
    • 30代のファミリー、子ども2人
    • ペット可の条件を提示
  • 結果
    • 募集開始から1カ月で契約成立
    • 長期入居が期待できるため、初期投資も数年で回収見込み

このように、築古物件でも適切なリフォームと差別化戦略を行うことで、相場よりやや高い家賃設定でも入居者が付く という例があります。

戸建賃貸の未来と可能性

戸建賃貸は、少子高齢化や人口減少が進む日本において、空き家問題の解決策 として大きな可能性を秘めています。特に在宅勤務やペット需要など、新しいライフスタイルに対応する選択肢として、戸建の需要は今後も一定程度見込まれます。

  • 空き家は負債から資産へ
    放置しているだけでは固定資産税などのコストを生み出す空き家も、リフォームを通じて収益を生み出す物件に変えられる。
  • 地域活性化にも貢献
    戸建賃貸を増やし、地域に新しい住民を呼び込むことで、シャッター商店街の活性化やコミュニティの再生にもつながります。
  • スモールスタートが可能
    戸建ひと棟からの賃貸経営であれば、アパート・マンション経営よりハードルが低い。個人でも十分挑戦が可能です。

将来的に家族構成や社会の価値観が変化しても、「広い空間が欲しい」「プライバシーを確保したい」というニーズはなくなりません。むしろ、今後はテレワークやワーケーションなど、新しい働き方が定着していく中で、戸建住宅の需要が伸びる可能性は十分に考えられます。

最後に…

本記事では、空き家を戸建賃貸として運用する際に必要なチェックポイントや手順、リフォーム、家賃設定、税務、リスク管理 などについて詳しく解説しました。ポイントをおさらいすると、以下のステップが重要です。

  1. 建物調査と市場調査
  2. 最低限のリフォーム計画とコスト管理
  3. 適正な家賃設定と効果的な入居募集
  4. 確実な賃貸契約と保険・税務手続き
  5. リスクマネジメント(修繕費用、入居者トラブル等)の準備

戸建賃貸は、「空き家問題の解決」「個人投資家や空き家所有者の収益確保」 の両面で、大変魅力的な選択肢となり得ます。もちろんリフォーム費用や入居者募集、税務申告など乗り越えるべき課題はありますが、それらをクリアすれば長期的・安定的な収益を得る ことも十分可能です。

もし、具体的な進め方やリフォーム内容に不安がある場合は、「空き家再生士Ⓡ」 や不動産会社、建築士に相談してみてください。専門家の知見を取り入れ、トラブルを未然に防ぐことで、スムーズに賃貸経営をスタートできるでしょう。

空き家を上手に活用して、社会問題の解決とご自身の収益向上を同時に叶える。それが、これからの時代に求められる不動産活用の大きな可能性です。ぜひ、空き家を資産に変える 戸建賃貸の世界に挑戦してみてください。応援しています!

POST: 2025.02.9