【解説】マクロ経済を空き家活用の専門家の観点から考える

こんにちは。一般社団法人 全国古家再生推進協議会 理事長の大熊重行(おおくま
しげゆき)です。本日のテーマは「マクロ経済を空き家活用の専門家の観点から考える」についてです。それでは参りましょう。

アメリカの動向

タックスヘイブン:租税回避地問題について、見聞きしたことのある人は多いでしょう。カリブ海の島国で無税の国があり、世界中の富裕層がそこに口座を持っている…というような。

しかし意外と知られていないのが、本当の租税回避地はアメリカに集中しているということです。世界136ヵ国の国と地域が法人税の最低税率15%を設定する国際課税の枠組みを作り、租税競争を抑制しようと試みています。タックスヘイブンにも網がかけられていく方針です。そんな中でアメリカ国内の租税回避地についても注目が集まっているのです。

トランプ政権時代には国際課税問題の協議から遠ざかっていたものの、バイデン政権に移行したことで再度交渉が加速することになったのですが、パナマ文書と似たような報告書は定期的に出されていて、その中で相続税が無いアメリカのサウスダコタ州で信託会社が保有する資産が過去10年で4倍の36兆円にまで急増していた事が明らかとなりました。1983年に信託財産に関する法律が改正されたサウスダコタ州では、匿名性が高まったことで税逃れが容易になった事が確認されています。

そうした信託の法律の自由度が高い世界20地域のうち、17地域は米国の中に存在するとする論文も発表されています。

アメリカ国内の租税回避地として有名なのはデラウェア州です。州外の利益には課税されない、海外子会社の利益には課税されないなど、グローバル企業やファミリー企業にとっては有利な制度設計になっており、デラウェア法人を保有しているという話はよく聞くものです。

国際課税が議論になればなるほど、世界一の大国であり、法人税の流出額が世界一とされ、世界で最も租税回避地があるとも言えるアメリカの動向は重要になってきます。

突拍子もない話に聞こえるでしょうが、こうした動きは確実に経済に影響を与え、投資マネーがどこに向かうかにも影響を与えてくるでしょう。

現金、物価…

世界的にATMが減少傾向にあります。現金を使用する機会が少なくなっているだけでなく、現金を使用・保有するコストも増加していくでしょう。

例えば、ゆうちょ銀行は2022年1月からATMで硬貨を入金する際に手数料を取る方針を打ち出したように、銀行の経営がそもそも厳しい中において現金の管理コストを吸収できるだけの余力はないのです。現金の管理コストはこれからもどんどん高くなっていくでしょう。そもそもATMで硬貨まで入金できるのは日本くらいで、そうしたところの技術力やサービスの良さは嬉しいものではありますが、逆に大きな変化に対応していけないというデメリットも存在するということです。

また、世界的にインフレが起こっています。コロナによって世界的に巨額の財政出動が行われ、規制解除によって需要が増大しているからです。各国の金融政策もそれを如実に表しています。2020年に世界38カ国のうち、利上げ9カ国、利下げ1カ国という状況だったのが、2021年には利上げ23カ国、利下げ8カ国となっています。

2022年現在は、さらにインフレが加速しています。2022年の2月に始まったウクライナ侵攻も相まって、原油などのエネルギー高によるコストプッシュが追い討ちをかけています。そうした中で、特にアメリカなどがインフレを抑え込むために金利を上げていくとどうなるか。通貨間の金利に差ができると為替に影響してきます。

例えば、日本はずっと金利を上げて来なかったので、アメリカの金利が上がると金利差ができて日本円が売られてドルが買われる円安ドル高につながるのです。新興国だともっと悲惨で、景気が良かろうと悪かろうと、自国通貨が暴落すると経済に悪影響を及ぼす度合いが高いため、利上げせざるを得なくなります。

日本の特異な点

そんな中、日本でも消費者物価が2%を超える上昇を示していますが、諸外国の8%といった数字と比較すればまだまだ抑えられている方だと言えます。しかし企業物価では海外の水準に近くなっていることから、無理やり吸収しているとも考えられますし、諸外国のようにインバウンドや規制解除など戻り切らない需要が原因であるかもしれません。日本はそうした特異な点がいくつか存在する国です。コインで入金できるATMも日本の特殊な状況と言えるでしょう。

まとめ

こうした社会のマクロな変化というものに目を向けることも時には必要です。空き家再生投資はテクニックが必要ですが、社会の大きな波を見ることもまた、今後の投資戦略を考える上で非常に重要です。今回ご紹介したものを見る限り、株式ではなく現物資産に資金が集まってくる傾向にあるようです。今後もそうなるようだと空き家投資の利回りは減少していくことになるでしょうから、早めの勉強と取得が重要になってくるかもしれません。

以上説明した内容については以下動画でも解説しています。
良かったら以下よりご覧ください。
https://zenko-kyo.or.jp/youtube/8013-2/


POST: 2022.09.20

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