中古戸建てを賃貸するリスクと対策【初心者向け】

こんにちは。(一社)全国古家再生推進協議会 理事長の大熊重之です。

本記事では、中古戸建てを賃貸する際に発生しやすいリスクや、その対策方法をわかりやすく解説します。中古戸建ては新築と比べて購入費用が抑えやすく、ファミリー層などからの根強い需要がある魅力的な投資対象です。しかし、築年数が経過しているからこその建物の老朽化、空室リスクや賃貸管理の負担、契約上のトラブルなども考えられます。

加えて、「古家再生投資プランナー」という資格を取得し、築古物件や空き家を再生して活用するための知識とノウハウを身につける方法がありますが、実際のリノベーションプランの作成・実行は(一社)全国古家再生推進協議会が認定する「古家再生士」に任せるという点を押さえておくことが重要です。

この記事が、これから中古戸建て投資を検討している初心者の皆さんにとって、リスク回避や適切な賃貸運営のためのヒントとなれば幸いです。

中古戸建てを賃貸するメリット

初期投資を抑えられる

中古戸建てを賃貸物件として活用する最大の魅力のひとつは、新築に比べて購入価格が安い点です。特に地方の築古物件だと、数百万円程度で購入できるケースもあります。新築時の「新築プレミアム」が剥がれ、相場価格に落ち着いているため、割高感が少なく、投資家の初期コスト負担を軽減できるのが特徴です。

また、一度購入した物件は、リフォームやメンテナンスの方法次第で大きく価値を高められる可能性があります。新築よりもローン返済額が低く抑えられるため、キャッシュフロー(家賃収入とローン返済の差額)を安定させやすくなるという点も大きなメリットです。

高い利回りが期待できる

初期投資が低いぶん、家賃収入とのバランスから利回りが高くなりやすいのも中古戸建ての魅力です。たとえば、購入価格500万円の物件で家賃5万円を得られれば、単純計算の表面利回りは12%に達します。もちろん物件ごとに修繕コストや空室リスクを織り込み、実質利回りを考慮する必要がありますが、アパートやマンション投資より高水準の利回りを目指せるケースがあるのは間違いありません。

また、ファミリー層など広い居住空間を求める入居者にとっては、戸建てならではのメリット(庭付き、駐車スペース複数台、近隣との騒音トラブルが少ないなど)をアピールできることから、入居率を保ちながら高めの賃料設定を狙うことも可能です。

競争が少ない

都市部を中心に、新築・築浅のマンションやアパートが数多く供給される一方、戸建ての賃貸物件は相対的に少ない状況です。需要と供給のバランスを考えると、戸建て賃貸に強いニーズを持つファミリー層やペット飼育希望者などが一定数いるにもかかわらず、供給が追いついていない地域も存在します。

そのため、適切な物件選定とリフォーム(リノベーション)を実施できれば、比較的高い家賃を維持したまま長期入居を実現できる可能性があります。

中古戸建てを賃貸する際のリスク

一方、中古戸建て特有のリスクも知っておく必要があります。事前にリスクを把握しておくことで、適切な対策を講じることが可能です。

設備や建物の老朽化

築古物件の場合、設備や建物そのものの老朽化が進んでいるケースが多く、初期の段階で大規模な修繕が必要になるかもしれません。たとえば、給排水管の腐食、屋根や外壁のひび割れ、シロアリ被害、耐震性能の不足などが挙げられます。

【対策】

  1. 専門家によるインスペクション
    物件購入前には、インスペクション(建物診断)を必ず実施し、見えない部分も含めて総合的な劣化状況を把握しましょう。

  2. 長期的な修繕計画
    購入後は、設備の交換時期やメンテナンスのスケジュールをあらかじめ立て、突発的な出費を回避できるよう計画的に進めます。

  3. 保険の加入
    火災保険や地震保険だけでなく、設備トラブルや自然災害による被害を一部補償するプランを検討しておくと、キャッシュフローを安定させやすくなります。

空室リスク

ファミリー向けの戸建て賃貸はニーズがある一方で、立地や築年数によっては空室期間が長引く可能性もあります。駅から遠い、周辺に商業施設が少ないなどの立地条件が悪い物件だと、なかなか借り手が見つからず家賃収入が得られないリスクが増大します。

【対策】

  1. 需要のあるエリアを選ぶ
    地域の人口動態や再開発計画、大型商業施設の進出状況などを下調べし、将来的にも需要が期待できるエリアを選びましょう。

  2. リフォームで魅力を高める
    外観や内装を刷新し、“古い”イメージを払拭することで、借り手に対する訴求力を強化できます。DIYでは難しい大規模リフォームは専門家に依頼し、費用対効果を計算しながら進めましょう。

  3. ターゲット層に合った設備や条件を整備
    例として、ファミリー層であれば駐車場2台以上の確保、ペット飼育可物件にしたい層に向けて防音や傷対策を強化するなど、借り手のニーズに沿った物件条件を整えることが重要です。

賃貸管理の負担

戸建て賃貸の場合、アパートやマンションと異なり、共用部分が少ないかわりに個別対応の手間が増えやすい傾向にあります。入居者からのクレーム対応、設備トラブル、庭や外構の管理など、オーナーが自主管理する場合は業務量がかなり多くなります。

【対策】

  1. 管理会社への委託
    入居者募集や家賃管理、クレーム対応などを一括して行ってくれる管理会社を活用すれば、オーナーの負担を軽減できます。管理手数料はかかりますが、長期的にはトラブル防止と安定経営につながるケースが多いです。

  2. 信頼できる修繕業者の確保
    給湯器の故障や水漏れなど、トラブル時にすぐ駆けつけてもらえる地元業者とのネットワークを構築しておくと、対応がスムーズになり入居者満足度も高められます。

  3. 長期入居の促進
    入居者とのコミュニケーションを密にし、快適な住環境を提供することで、退去を減らす施策を講じることが重要です。退去があるたびにリフォームや入居者募集のコストがかかるため、長期入居によって経営を安定させられます。

法律や契約トラブル

不動産賃貸には借地借家法や民法など多くの法律が絡み、契約書の不備や家賃滞納、退去時の原状回復トラブルなどに発展するケースがあります。法律知識や契約周りのルールを把握していないと、想定外のリスクを被る可能性があります。

【対策】

  1. 弁護士・司法書士など専門家へ相談
    賃貸借契約書の作成時やトラブル発生時には、早めに専門家へ相談することでリスクを軽減できます。

  2. 家賃保証会社の活用
    家賃滞納リスクを抑えるために、入居者に家賃保証会社と契約してもらう仕組みを導入し、オーナーが家賃を確実に受け取れる環境を整えます。

  3. 原状回復ルールの明確化
    退去時のクリーニング費用やクロス張り替え費用など、一般的にどこまでが入居者負担か事前に契約書でしっかり定めておきましょう。

物件選びのポイント

上記のリスクを踏まえた上で、中古戸建て賃貸を成功させるためには物件選びが何より重要です。次のポイントを押さえて慎重に検討しましょう。

立地

「不動産は立地が9割」と言われるほど、立地条件は賃貸需要と直結します。駅やバス停へのアクセス、近隣商業施設や学校・病院などの利便性をチェックするのはもちろん、将来の人口動態や再開発計画にも注目します。

  • 交通アクセス: 駅や主要道路への距離や所要時間
  • 生活利便性: スーパーやコンビニ、ドラッグストア、病院、学校などの位置
  • 街の将来性: 再開発や大規模商業施設の建設計画など

中古戸建てを購入する際は、販売価格だけに飛びつかず、これらの点を総合的に評価する必要があります。

建物の状態

築古物件の場合、見た目以上に内部が劣化していることが多々あります。建築基準法や耐震性能(旧耐震基準か新耐震基準か)を確認した上で、具体的な**建物診断(インスペクション)**を受けましょう。配管や基礎・柱・梁などの構造が健全かどうかで、後々の修繕費が大きく変わります。

また、木造物件ではシロアリ被害水回りの腐食などにも注意が必要です。インスペクション結果をもとに、どの程度のリフォームをいつ行うか、修繕費の概算を立てておくと投資計画がスムーズになります。

リフォームのコストと範囲

築古物件を魅力的な賃貸物件に仕上げるため、ある程度のリフォームは欠かせません。フルリノベーションが必要な場合は数百万円~それ以上の費用がかかることもあります。壁紙の張り替えや水回りの交換程度で済む場合は数十万円で足りるケースもありますが、まずは複数の業者から見積もりを取り、費用対効果をしっかり検討することが大切です。

  • 外装・屋根: 雨漏りやひび割れの修繕
  • 内装: 壁紙、床材、畳などの交換
  • 設備: キッチンや浴室、給湯器、エアコンなどの交換
  • 耐震補強: 古い木造住宅の場合、耐震補強が必須となるケースも

このあたりの計画をしっかり立てることで、物件完成後の家賃設定や収益シミュレーションを正確に算出できるようになります。

古家再生投資プランナーとは?

築古物件や空き家を投資用不動産として再生する際、「古家再生投資プランナー」という資格の存在があります。これは(一社)全国古家再生推進協議会が認定する資格で、空き家や古家を再生して経営に活かすための知識とノウハウを体系的に学べるのが特徴です。

古家再生投資プランナーを取得するメリット

  1. 適切な物件選定力が身につく
    築古物件を投資対象とする際、どのようなポイントに注目すべきか、物件の価値やリスクを正しく見極める能力を養えます。

  2. 法律や税制の基礎知識の習得
    不動産投資に関連する借地借家法や民法、税制優遇などの制度について学べるため、契約トラブルや税務リスクの回避にも役立ちます。

  3. ネットワーク構築
    同じ志を持つ「古家再生投資プランナー」との情報交換や、協議会を通じたコミュニティに参加する機会が得られます。地方や地域特化の情報なども集まりやすくなり、投資判断の幅が広がります。

リノベーションプランは古家再生士に任せる

ただし、「古家再生投資プランナー」の資格を取得しただけでは、自分自身がリノベーションプランを手掛けるわけではありません。実際のリノベーションプランの作成や施工管理は、**(一社)全国古家再生推進協議会が認定する「古家再生士」**に任せることになります。

  • 古家再生投資プランナー」: 不動産投資や物件選定、収支計画、リスク管理などの総合的な知識を持つ
  • 古家再生士: リノベーションの具体的な技術知識や施工管理、住宅再生に必要な専門スキルを持つ

このように資格が分かれており、投資プランナーはどちらかといえば、物件選定や投資戦略、法務・税務知識など「投資」の側面に強みがあります。一方、古家再生士は「建物の再生・施工」に強みがあります。両者が連携することで、空き家や築古物件を効果的に再生し、投資的にも実利を追求する体制が整うのです。

まとめ

中古戸建てを賃貸運用する際は、初期投資を抑えて高利回りを狙える一方、老朽化・空室リスク・賃貸管理負担・法律トラブルなど、さまざまな課題に直面することになります。こうしたリスクを回避し、安定した収益を得るためには以下のポイントを押さえることが大切です。

  1. インスペクションの活用・修繕計画の立案
    築古物件は必ず専門家による診断を行い、長期的な修繕計画を作成して、大きな出費を見込んでおくことが必要です。

  2. 需要のあるエリア選び
    立地が悪いと長期空室につながるリスクが高まります。交通アクセスや生活利便性、将来の人口動態などを確認しながら物件を選定しましょう。

  3. 賃貸管理の外注やネットワーク強化
    管理会社や信頼できる地元修繕業者を確保し、万が一のトラブルに素早く対応できる体制を整えると同時に、入居者満足度を維持する施策を進めるのが肝心です。

  4. 法律・契約トラブルの回避
    賃貸借契約書や家賃保証制度をしっかり整備し、原状回復や退去時の精算ルールなどを事前に明確化しておくことで、余計なトラブルを減らすことができます。

  5. 古家再生投資プランナー」の取得で投資知識を強化
    法律や税制、物件選定から収支計画に至るまで、幅広い知識を体系的に学べるのが大きな利点です。ただし、実際のリノベーションプランの作成や施工管理は「古家再生士」に任せる点を理解し、適切な役割分担のもとで再生プロジェクトを進めましょう。

こうした手順を踏むことで、築古物件を「価値ある賃貸物件」に生まれ変わらせ、空き家問題の解消や地域の活性化に寄与しつつ、自分自身の投資利益も確保できる「ウィンウィン」の関係を築くことが可能です。

最後に…

中古戸建て賃貸は、うまく活用すれば安定した家賃収入地域社会への貢献を同時に実現できる非常に魅力的な投資手法です。しかし、築古物件ならではのリスクや課題を見誤ると、予想以上の修繕費や空室期間の発生、さらには契約トラブルなどに巻き込まれる可能性があります。

そこで、「古家再生投資プランナー」という資格を取得し、物件選定から収支計画、法律・税務知識まで幅広いノウハウを身につければ、投資判断の精度が高まり、リスク回避能力も向上します。さらに、古家再生士との連携によって、実際のリノベーション作業をスムーズに進めることができ、プロフェッショナルの視点で「建物再生」を行うための信頼性が高まります。

不動産投資は長期にわたる取り組みです。確かな知識と計画性、そして周囲の専門家や資格保有者とのネットワークを活かすことで、築古物件の魅力を最大限に引き出し、成功へと近づくことができるでしょう。少しでも興味を持たれた方は、まずは中古戸建て物件の市場調査やインスペクションの利用、そして資格取得に向けた情報収集などから始めてみてください。

築古物件を再生し、賃貸経営を通して地域貢献と安定収入の両立をめざす。その第一歩として、本記事の内容が皆様のお役に立つことを願っています。

POST: 2025.03.1